3種混合とポリオはそれぞれ追加接種を就学前に行う意義が異なりますので、まずはポリオの方から始めます。ポリオは根絶に向けて世界で努力している疾患で、先進国では著しくその発症が抑制されています。日本でもほとんど患者さんは出ない状況でしたが、予防のためにこどもが飲んだ弱毒生ワクチンが体内で毒性を回復し、周囲のひとに感染してポリオを発症することがあるため、分解したウィルス成分を用いた不活化ワクチンに変更されました。現在は4種混合ワクチンに含まれています。不活化ワクチンは生ワクチンと比べて安全ではあるのですが、効果が長続きしません。最後に接種してから5年も経つと大分抗体価(免疫)が下がってくるのでそれをもう一度上げて、本人のために罹らないようにしましょうというのが追加接種の意義です。ただし前述の通り日本では何年も患者さんが出ていませんので、それほどリスクが高いわけではありません。流行地に行く場合にはお勧めとなります。
3種混合を追加接種する理由は百日咳の予防です。百日咳は乳児期早期にかかると重症化しやすく、無呼吸のため人工呼吸器管理が必要になったり、稀ではありますが脳炎を起こすこともあります。3種混合(現在は4種混合)ワクチンの導入により大きく患者数は減少しましたが、しばしば小流行があり、学童期以降の免疫低下が問題とされています。成人でもかかりますが、乳児期以降は通常軽症で長引く咳(それも軽いこともあります)以外の特徴的な症状に乏しく、なかなか診断に至らないのが現状です。従って、3種混合ワクチンを就学前に接種する理由は、低下してくる免疫を上げると言う点ではポリオと同じですが、本人のためというよりも重症化しやすい乳児のために感染源にならないようにしましょうという意味合いが強くなります。そうなると問題点が二つあります。まず一点目は、感染源にならないようにするという目的のためにはたくさんの人が免疫を高めておく必要があるのに、任意接種では接種率の上昇が見込めないだろうということです。二点目ですが、学童の免疫を上げても成人になって免疫が下がるのであれば、やはり流行は阻止できないということです。アメリカでは就学前に加え年長児にも3種混合ワクチンを接種しています(そのままでは局所反応が強いので、成人用の3種混合ワクチンが用いられています)が、それでも流行は阻止できず、理論的には10年毎の追加接種が必要と考えられています。それはあまりにも現実的ではないので、現在アメリカでは生後間もない赤ちゃんのお母さんが感染源にならないように出産を控えた妊婦さんに接種を推奨しています。
以上、3種混合・ポリオワクチンの追加接種についてまとめました。それでは4種混合ワクチンで追加接種をしたいと考えられる方が当然いらっしゃると思いますが、それはできません。理由は4種混合ワクチンの接種を5回以上行うことが認可されていないという、ただそれだけのことなのですが、法の定めによって禁じられていることになります。料金は3種混合が税込5000円、ポリオが税込9900円となります。